11.4 学習からのアプローチ

11 性格

学習目標

  • 性格に対する行動主義的な観点を説明できる
  • 性格に対する認知的な観点を説明することができる
  • 性格に対する社会的認知の観点を説明できる

フロイトや新フロイト派の精神力動的アプローチが、性格を内面的な(隠れた)プロセスに関連づけるのとは対照的に、学習の観点からのアプローチは観察可能な行動にのみ焦点を当てます。このことは、このアプローチが精神力動と比べて優れている点を示しています。このアプローチは観察可能、測定可能な現象を対象としているため、科学的に検証することができるのです。

行動主義の視点

行動主義者は、生物学的な決定論を信じていません。彼らは性格的特徴を先天的なものとは考えていないのです。その代わりに、性格は生物の外側にある強化と結果によって大きく形成されると考えています。つまり、人は事前の学習に基づいて、一貫した行動をとるのです。厳格な行動主義者であるB.F.Skinnerスキナーは、性格理論家が研究している永続的で一貫した行動パターンを含め、すべての行動には環境のみが責任を負うと考えていました。

Skinnerは、私たちが一貫した行動パターンを示すのは、特定の反応傾向を身につけているからだと提唱しました(Skinner, 1953)。言い換えれば、私たちは特定の方法で行動することを「学習」するのです。私たちは、ポジティブな結果につながる行動を増やし、ネガティブな結果につながる行動を減らしていきます。Skinnerは、Freudの「性格は子供の頃に決定する」という考えに反対しました。Skinnerは、性格は最初の数年間だけではなく、人生全体を通して発達すると主張しました。私たちの反応は、新しい状況に遭遇するのに伴って変化するということです。そのため、Freudが予想していたよりも、時間の経過とともに性格が変化していくことが予想されます。例えば、リスクテイカーである若い女性、グレタを考えてみましょう。彼女は車を速く運転し、ハンググライダーやカイトボードなどの危険なスポーツに参加します。しかし、彼女が結婚して子供を産むと、彼女の環境における強化と罰のシステムが変わります。スピード違反や過激なスポーツは強化されなくなり、彼女はそれらの行動に関与しなくなります。それどころか、グレタは自分のことを「慎重な人」と表現するようになるのです。

社会的認知の視点

Albert Banduraアルバート・バンデューラは、学習によって性格が形成されるというSkinnerの考えに賛同しました。しかし、Banduraは、思考や推論が学習の重要な要素であると考え、Skinnerの厳格な行動主義的な性格形成のアプローチには同意しませんでした。彼は、性格の個人差の原因として、学習と認知の両方を重視する社会的認知理論social-cognitive theoryを提唱しました。社会的認知理論では、相互決定論、観察学習、自己効力感などの概念が性格形成に関与しています。

相互決定論

Bandura(1990)は、Skinnerの「環境のみが行動を決定する」という考え方に対して、相互決定論reciprocal determinismという概念を提唱しました。これは、認知的処理、行動、文脈のすべてが相互に作用し、それぞれの要素が他の要素に影響を与え、同時に影響を受けるというものです(図11.10)。認知的処理とは、信念、期待、性格特性など、以前に学習したすべての特性を指します。行動とは、報酬や罰を与えられる可能性のある、私たちが行うあらゆることを指します。最後に、行動が起こる文脈とは、環境や状況のことで、報酬や罰を与える刺激を含みます。

図11.10 Banduraは「相互決定論」という考え方を提唱している。
私たちの行動、認知プロセス、状況的背景のすべてが互いに影響しあっている。

例えば、イベントに参加したとき、アトラクションのひとつに橋からのバンジージャンプがあったとします。あなたはそれをするでしょうか?ここでは、行動はバンジージャンプです。この行動に影響を与える可能性のある認知的要因としては、自分の信念や価値観、過去の類似行動の経験などがあります。最後に、文脈とは、その行動に対する報酬構造を指します。相互決定論によれば、これらすべての要素が作用しているのです。

観察学習

Banduraの学習理論への重要な貢献は、多くの学習が代理の(他人の経験を想像などにより自分のものとして経験する)学習であるという考えです。私たちは他人の行動とその結果を観察することで学びますが、これをBanduraは観察学習observational learningと呼んでいます。Banduraは、このような学習が性格の形成にも関わっていると考えました。私たちは、自身の行動を学習するのと同様に、他の人やモデルが行っているのを見て、新しい行動パターンを学ぶのです。Banduraは、行動主義者の強化に関する考え方を参考に、モデルの行動を真似るかどうかは、モデルが強化されているか罰せられているかどうかによると示唆しました。観察学習によって、私たちは自分の文化の中でどのような行動が許容され、称賛されるのかを学び、また、どのような行動が罰せられるのかを見ることで、逸脱した行動や社会的に許容されない行動を抑制することを学びます。

観察学習には、相互決定論の原理が働いていると考えられます。例えば、環境中のどのような行動を模倣するかは、個人的な要素によって決定され、その環境中の出来事は、別の個人的な要素によって認知的に処理されます。ある人は、注目されることを強化として経験し、その人はモデルが強化されていた行動である「自慢」などの行動を真似するようになるかもしれません。他の人にとっては、注目されるにもかかわらず、自慢することにネガティブな印象を抱くかもしれません。また、注目されることで、詮索されているように感じられるかもしれません。どちらにせよ、真似をしない理由が違っていても、その人はその行動を真似する可能性は低くなります。

自己効力感

Bandura(1977, 1995)は、学習や性格形成に影響を与える認知的・個人的要因を数多く研究してきましたが、最近では自己効力感self-efficacyという概念に注目しています。自己効力感とは、社会的経験を通して培われた、自分の能力に対する自信のレベルです。自己効力感は、私たちがどのように課題に取り組み、目標に到達するかに影響します。観察学習において、自己効力感は、どのような行動を模倣するか、またその行動を実行することの成功に影響を与える認知的な要因です。

自己効力感の高い人は、自分の目標は手の届くところにあると考え、困難は克服すべき課題であるとポジティブにとらえ、自分が関わっている活動に深い関心を持って積極的に参加し、挫折から素早く立ち直ることができると考えています。逆に、自己効力感の低い人は、自分の能力を疑って挑戦を避け、失敗やネガティブな結果に目を向けがちで、挫折すると自信を失ってしまいます。自己効力感は、ある特定の状況下で感じることができます。例えば、英語の授業では自分の能力に自信があるが、数学の授業では自信がないというような場合です。

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