6.4 観察学習

06 学習

モデリングプロセスのステップ

もちろん、モデルを観察するだけでは行動を学ぶことはできません。Banduraは、学習が成功するのに必要なモデリングのプロセスにおける具体的な段階として、「注意」「保持」「運動再生」「動機づけ」を説明しています。まず、モデルが何をしているかに注目しなければなりません。これが「注意」です。次に、自分が観察したことを記憶にとどめることができるかどうか、これが「保持」です。次に、観察して記憶した行動を実行できなければなりません。これが「運動再生」です。そして、あなたには「動機づけ」が必要です。学習のためにはその行動を真似したいと思う必要がありますが、やる気があるかどうかは、モデルに何が起こったかによって決まります。モデルの行動が強化されているのを見れば、真似したいというモチベーションが高まります。これは代理強化vicarious reinforcementと呼ばれています。一方、モデルが罰せられているのを見た場合は、彼女を真似するモチベーションが下がります。これを「代理罰vicarious punishment」といいます。例えば、4歳のアリソンが、母親の化粧品で遊んでいた姉が、母親が来たときにタイムアウトされてしまったのを見たとします。母親が部屋を出た後、アリソンも化粧品で遊びたいと思いましたが、母親にタイムアウトされたくはありませんでした。彼女はどうしたでしょう?新しい行動を実際に示した後、その行動を繰り返すかどうかは、あなたが受けた強化が大きく影響します。

Bandura は、モデリング行動、特に大人の攻撃的・暴力的な行動を子どもがモデリングすることについて研究しました(Bandura, Ross, & Ross, 1961)。 Bandura は、ボボ人形と呼ばれる5フィート(約1.5m)の膨らませた人形を使って実験を行いました。この実験では、子どもの攻撃的な行動は、教師の行動が罰せられたかどうかによって影響を受けました。あるシナリオでは、子どもが見ている中で、教師が人形を叩いたり、投げたり、さらには殴ったりと攻撃的な行動をとりました。先生の行動に対する子どもたちの反応は2種類ありました。先生が悪いことをして罰せられると、子どもたちは先生のような行動をとる傾向が減りました。先生が褒められたり、無視されたりすると、子どもたちは先生の行動や言葉を真似しました。彼らは人形を殴ったり、蹴ったり、怒鳴ったりしたのです。

有名なボボ人形の実験についての動画を見て、実験の一部とAlbert Banduraのインタビューを見てみましょう。

この研究の意味するところは何でしょうか?

Bandura は、人は見て学ぶものであり、この学習は、向社会的な効果と反社会的な効果の両方を持ちうると結論づけています。社会的に受け入れられる行動を促すためには、向社会的(ポジティブ)モデルを用いることができます。

特に親はこの発見に注意すべきです。子供に本を読ませたいのであれば、本を読んであげましょう。自分が読んでいる姿を子供に見せましょう。家に本を置いておきましょう。自分の好きな本について話してみましょう。子供たちに健康でいてほしいと願うなら、正しい食生活と運動をしている姿を見せ、一緒に体力づくりの活動をする時間を持ちましょう。優しさや礼儀正しさ、誠実さなどの資質も同様です。

子供は親を観察し、親のモラルまで学ぶので、一貫性を持ち、「わたしのする通りではなく、わたしの言う通りにしなさい(Do as I say, not as I do)」という古い格言は捨てましょう。子供は、あなたが言うことではなく、あなたがすることを真似する傾向があるのです。親以外にも、キング牧師やガンジーなど、社会に影響を与えた人物が向社会的モデルとされています。あなたの人生において、向社会的モデルとなった人物に心当たりはありませんか?

観察学習の反社会的な効果についても言及しておきましょう。冒頭のクレアの例で見たように、娘はクレアの攻撃的な行動を見て、それを真似しました。研究は、被虐待児が成長して自分自身も虐待者になることが多いことを示唆していますが、これはその理由を説明するのに役立つかもしれません(Murrell, Christoff, & Henning, 2007)。

実際、虐待を受けた子どもの約30%が、虐待をする親になると言われています(米国保健社会福祉省、2013年)。私たちは、自分が知っていることをしがちです。虐待を受けた子どもたちは、親が怒りや不満を暴力や攻撃的な行為で処理するのを目の当たりにして育ち、自分もそのような行動をとるようになることが多いのです。悲しいことに、この悪循環を断ち切るのは難しいことです。

暴力的なテレビ番組や映画、ビデオゲームも反社会的な影響を与えると示唆する研究もありますが(図6.18)、メディアの暴力と行動の相関関係や因果関係を理解するためには、さらなる研究が必要です。いくつかの研究では、暴力の視聴と子どもに見られる攻撃性との間に関連性があるとされています(Anderson & Gentile, 2008; Kirsch, 2010; Miller, Grabell, Thomas, Bermann, & Graham-Bermann, 2012)。子どもが高校を卒業する頃には、さまざまなメディアを通じて、殺人、強盗、拷問、爆弾、殴打、強姦など、約20万件の暴力行為にさらされているということを考えると、こうした結果は驚くべきことではありません(Huston et al., 1992)。 メディアによる暴力の視聴は、現実の状況でそのように行動することを教えることで攻撃的な行動に影響を与える可能性があるだけでなく、暴力的な行為に繰り返しさらされることで、人々がそれに鈍感になってしまうということも示唆されています。心理学者たちはこの現象を解明しようとしています。

写真は、2人の子どもがビデオゲームをしながら、画面に向かって銃のようなものを向けているところです。
図6.18 ビデオゲームは人間を暴力的にするのか?心理学の研究者がこのテーマを研究している。

学習のためのリンク

暴力的なビデオゲームと暴力的な行動との関係についての動画(英語)

暴力的なメディアと攻撃性

暴力的なメディアを見たり、暴力的なビデオゲームをしたりすると、攻撃性が高まるのでしょうか?

Albert Banduraの初期の研究では、テレビの暴力が子供の攻撃性を高めることが示唆されていましたが、最近の研究でもこのような結果が支持されています。

たとえば、Craig Andersonらの研究(Anderson, Bushman, Donnerstein, Hummer, & Warbuten, 2015; Anderson et al., 2010; Bushman et al., 2016)では、暴力的なメディアへの曝露時間と攻撃的な思考や行動との間に因果関係があることを示唆する広範な証拠が見つかっています。

一方で、Christopher Fergusonらの研究では、暴力的なメディアへの曝露と攻撃性との間には関連性があるかもしれないが、これまでの研究では精神的健康や家庭生活を含む攻撃性の他のリスク要因を説明していない、ということが示唆されています(Ferguson, 2011; Gentile, 2016)。あなたはどう思いますか?

図6.16 credit: U.S. Air Force, Senior Airman Kasey Close

図6.17 credit a: modification of work by Tony Cecala; credit b: modification of work by Andrew Hyde

図6.18 credit: “woodleywonderworks”/Flickr

図6.14 credit: Ted Murphy

図6.15 credit: modification of work by “FutUndBeidl”/Flickr

Openstax,”Psychology 2e 6.4 Observational Learning (Modeling)”.https://openstax.org/books/psychology-2e/pages/6-4-observational-learning-modeling

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