8.4 記憶力を高めるための方法

08 記憶

効果的な勉強法

この章で紹介した情報をもとに、勉強のテクニックを磨くための戦略と提案をいくつか紹介します(図8.19)。こうした戦略で重要なのは、自分に最も適した方法を見つけることです。

図8.19 記憶術は、授業の勉強をするときにも有効である。

精緻化リハーサルを行う:Fergus CraikとRobert Lockhart(1972)は、有名な論文の中で、より深く処理された情報が長期記憶に入るということについて述べています。この理論は「処理水準level of processing」と呼ばれています。ある情報を覚えておきたいなら、その情報をより深く考え、他の情報や記憶と結びつけて、より意味のあるものにしなければなりません。例えば、海馬が記憶処理に関与していることを覚えようとするなら、記憶力に優れたタツノオトシゴを思い浮かべれば、海馬をよりよく覚えられるかもしれません。

自己参照効果self-reference effectを応用する:精緻化リハーサルを行う際には、暗記しようとしている資料を自分にとって個人的に意味のあるものにすると、より効果的です。つまり、自己参照効果を利用するのです。自分の言葉でノートを書いたり、文章中の定義を自分の言葉で書き直したり、他の授業で習ったことと関連づけたり、自分の生活にどう応用できるかを考えたりしましょう。このようにして、思い出したいときにきちんとアクセスできるような手がかりの網を構築するのです。

分散学習distributed practiceを行う:一度にすべてを詰め込もうとするのではなく、短時間で時間を区切って学習しましょう。記憶の定着には時間がかかります。時間を区切って勉強することで、記憶の定着のための時間を確保することができるのです。また、詰め込み学習をすると、概念間のリンクが活発になり、リンクに引っかかってしまうので、せっかく学んだ残りの情報にアクセスできなくなってしまいます。

リハーサル、リハーサル、リハーサル:時間をかけて、間隔を空けて計画的に学習を行い、教材を復習しましょう。ノートを整理して勉強し、小テストや試験の練習をし、新しい情報を、すでによく知っている他の情報と結びつけましょう。

効率よく勉強する:学生は素晴らしい蛍光ペンを持っていますが、蛍光ペンを使うのはあまり効率的ではありません。なぜなら、すでに学んだことを勉強するのに多くの時間を費やしてしまうからです。蛍光ペンの代わりに、単語カード(インデックスカード)を使いましょう。片面に問題を書き、もう片面に答えを書きます。勉強するときは、カードを正解したものと間違ったものに分けます。間違えたカードを勉強して、どんどん分類していきます。最終的には、すべてのカードが正解の山に入ります。

妨害に注意:妨害される可能性を減らすために、テレビや音楽などの妨害や気が散るものがない静かな時間に勉強しましょう。

体を動かす:運動が体に良いことはもちろん知っていると思いますが、心にも良いことを知っていましたか?研究によると、定期的な有酸素運動(心拍数が上がるもの)は記憶力に良いとされています(van Praag, 2008)。有酸素運動はニューロン新生neurogenesisを促進します。ニューロン新生とは、記憶や学習に関係する脳の領域である海馬で、新しい脳細胞が成長することです。

十分な睡眠をとる:眠っている間も、脳は働いています。睡眠中、脳は情報を整理し、長期記憶に定着させるのです(Abel & Bäuml, 2013)。

ニーモニック(記憶術)を活用する:この章の前半で学んだように、記憶を助ける工夫は情報を覚えたり思い出したりするのに役立つことがよくあります。記憶を助ける工夫には、頭字語(アクロニムacronym)のようなさまざまな種類があります。頭字語とは、覚えておきたい単語の頭文字をとったものです。例えば、五大湖の近くに住んでいても、五大湖の名前をすべて思い出すのは難しいでしょう。では、「HOMES」という言葉を思い浮かべてみてはどうでしょうか。HOMESとは、ヒューロン湖Huron、オンタリオ湖Ontario、ミシガン湖Michigan、エリー湖Erie、スペリオル湖Superiorの5つの五大湖の頭文字をとったものです。

もう1つの記憶を助ける工夫は折句(アクロスティックacrostic)と呼ばれるもので、単語の最初の文字をすべて使ってフレーズを作ります。例えば、数学のテストで、演算の順番がなかなか思い出せない場合、次のような文章を思い浮かべるといいでしょう。括弧Parentheses、指数Exponents、掛け算Multiplication、割り算Division、足し算Addition、引き算 Subtraction、の順で、「Please excuse My Dear Aunt Sally」となります。また、ジングルと呼ばれる韻を踏んだ曲がありますが、これには概念に関連したキーワードが含まれており、例えばi before e, except after cなどがあります。

i before e, except after c(iはeの前、cの後じゃなければね) は、英語のつづりについての覚え歌で、friendのような単語ではiがeの前に来るが、receiveのようにcがあるときは例外(eが先、iが後)だということを表しています。

図8.18 (credit: modification of work by Cory Zanker)

図8.19 (credit: Barry Pousman)

Access free at https://openstax.org/books/psychology-2e/pages/8-4-ways-to-enhance-memory

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